UltiMaker S5 製品レビュー
本記事は、All3DP.comに掲載された記事を日本語に翻訳したものです。
長所と短所
<長所>
- 非常に簡単な操作設定
- 卓越したプリント品質
- 大きい造形範囲
- さまざまなマテリアル(材料素材)使用可能
- 直感的なタッチスクリーンで、すべてのプロセス段階を確認可能
- Cura(スライサーソフト)から遠隔でプリント開始やリモートモニタリング可能
- プロフェッショナルやスモールビジネスに最適
<短所>
- 高価な3Dプリンターである
- プリント時間が比較的遅い(レイヤー高さによって異なる)。
- カメラがフリーズすることがある
- 特定マテリアル(材料素材)を使用するとプリントが難しくになる
所感

UltiMaker S5は、卓上3Dプリンターの中では、間違いなく高価な部類に入ると思います。しかし、誤解しないでいただきたいのは、このプリンターは初心者や気の弱い人には向いていないということです。デザイナー、エンジニア、中小企業、プロシューマーなど、お金に余裕のある人にとっては、UltiMaker S5は究極のハードウェアと言えるでしょう。
S5を使ってみてすぐに気づいたのは、驚異的なプリント品質、造形物のセットアップから取り外しまでの直感的な操作性、そして、堂々とした造形範囲のサイズでした。これらの要素により、UltiMaker S5は、憧れのUltiMaker 3の後継機としてふさわしい製品となっています。
オランダのこのメーカーは、前モデルをさらに改良し、そのオープンソースの製品群は、プロのハイエンド市場に向けて大きな一歩を踏み出したと言えるでしょう。

人生のあらゆることがそうであるように、UltiMaker S5も完璧ではありません。高価な価格(日本での販売価格は税別949,800円)もさることながら、セットアップとプリントの両方で比較的時間がかかり、Cura Connectとハードウェア自体の間にいくつかの問題があります。しかし、これらのデメリットは、S5の高品質なプリント能力によって完全に打ち消されています。
UltiMaker S5は、プリントサイズが小さくても大きくても大成功を収めました。同梱されているUltiMaker Tough PLAとPVAサポート材は、完璧な表面品質と複雑な形状を持つさまざまなオブジェクトを製作でき魅力的でした。
しかし、UltiMaker以外のマテリアル(材料素材)を使ってプリントしてみた結果、微妙なものとなりました。例えば、NinjaFlexではまともなプリントができませんでしたが、これはノズルの目詰まりが原因のようでした。しかし、PLAやWoodのような特殊なフィラメントでは、ほぼ成功しました。
UltiMaker S5は、最初に行ったテストで、非常に高い多種マテリアルプリント能力を持つと分かりましたが、必ずしもマルチカラーではありませんでした。2つの異なる色のPLAフィラメントを使ってプリントしようとしたとき、プリント品質はわずかに、しかし顕著に低下しました。実際、3Dプリンターは「プリントコアBBは汎用PLA用に設計されていない」と警告してきました。
これらの問題を除けば、UltiMaker S5はPLAとPVAを見事に使いこなし、これまでで最も印象的なプリントを行うことができました(詳しくは「プリント」の項目をご覧ください)。タッチスクリーンとCuraによるリモートプリントにより、プリントジョブ開始とモニタリングが信じられないほど簡単にできます。
価格設定が高額にもかかわらず、UltiMakerがS5を一般消費者や予算の少ないメーカー向けに販売していないことは明らかです。この3Dプリンターは、プロやデザイナー、中小企業などの、信頼性が高く、効率的で、直感的に操作を持ち、非常に優れた機能を持つプロトタイプやパーツを製作できる3Dプリンターを探している人のために作られています。

機能


本記事ではUltiMakerS5を実際に使用しレビューを行います。初めにこの新機種の特徴と旧機種からの改良点を簡単にご紹介いたします。
UltiMaker S5の最大の特徴は330×240×300mmと大型造形が可能なことです。旧機種UltiMaker3の215×215×200mmと比較するとその差は歴然です。さらに、デュアルエクストルージョン機能に加え、フィーダーシステムにフローセンサーを搭載する事でフィラメントが無くなった際には自動的にプリントが中断されるように改良されました。
また、UltiMaker S5は3Dプリントプロセスの信頼性、効率性、直観性を実現するように設計されています。特に交換可能なプリントコアは汎用性が非常に高く、使いやすく、メンテナンスも容易です。様々なノズルサイズが用意されており、印刷速度を重視した造形や詳細なディティールの再現等、用途に合わせてプリントコアを変更できます。プリントコアを使い分けることでプロトタイピングや生産の目標を達成に寄与する等様々なニーズに答える事が可能です。
UltiMakerS5はガラスビルドプレートを交換して使用することが可能です。各ビルドプレートは非常に剛性の高いアルミニウム鋳造で作成された加熱プラットフォーム上にクリップで簡単に固定することが可能です


また、UltiMakerS5はプリンター前面にフルカラーのタッチスクリーンディスプレイとユーザーフレンドリーなUIにより初心者でも容易に印刷や各種設定等の操作が可能です。


ボーデンエクストルージョンシステムを採用したUltiMaker S5は超軽量なプリントヘッドを用いることでプリントプロセスを高速に行う事ができます。エクストルーダーはTPU等の柔軟性のある素材もプリントが行えるように汎用性が高い設計となっています。工具鋼製のフィーダーギアは長期間の摩擦に耐えれるように超硬質なコーティングが施されています。さらに、UltiMakerはシリコンノズルカバーの設計を刷新することで、より安定したエアフローと素材の効率化を実現しました。
今回新たに搭載されたフローセンサーは素材の流量を検知することが可能です。これにより素材が適切に送り出されない場合や素材が無くなった場合に自動的にプリント作業を一時停止させ、ユーザーに通知を行う事が可能となりました。
UltiMaker S5の発表と同時に新素材UltiMaker ToughPLAを発表しました。UltiMaker ToughPLAは大規模なプリントに適した素材であり、特に機能的なプロトタイプ、ツーリングや製造補助等に最適化されたテクニカルマテリアルです。UltiMaker ABSと同等の衝撃強度と高い剛性を備えています。今回このUltiMaker ToughPLAとUltiMaker S5と同時に入手することが出来ましたので、それを用いてハードウェアテストを実施しました。
開梱とセットアップ


UltiMaker S5でのプリントが待ち遠しいので、すぐに開梱し最新マシンのセットアップを開始しました。UltiMaker S5は保護用の発泡スチロールでしっかりと梱包されており、箱から出してすぐにプリントを開始できる状態でした。箱の中には、洗練された箱型デザインのUltiMaker S5の他に付属品や交換部品等が多数同梱されています。
UltiMaker S5の内容物は以下の通りです。
- ガラスビルドプレート
- NFC機能付きスプールホルダー
- 電源ケーブル
- イーサネットケーブル
- USB
- プリントコアAA 0.4(x2:プリントコア1個装着済み
- プリントコアBB 0.4 (x1)
- XY補正シート-ガラス板
- キャリブレーションカード
- ノズルカバー (x3)
- タフPLA 750g //(最近はPLAもある)
- PVA 750g
- スティックのり
- オイル
- グリース
- 六角ドライバー 2mm


UltiMaker S5はプラグアンドプレイな3Dプリンターですが、実際に稼働させるまでには大きく分けて3つの手順を行う必要があります。
次に本体起動後にタッチスクリーンに表示される本体設定の手順(ウェルカム設定)を実施する必要があります。ウェルカム設定では、言語選択、ガラスビルドプレートの取り付け、コアの取り付け、プリント素材のロード、ネットワーク接続設定、ファームウェアアップデート等を行う事が可能です。これで本体の設定が全て終わりです。


最後にUltiMaker Cura(スライスソフト)を用いて印刷を開始するための手順を実施する必要があります。UltiMaker CuraではSTLファイルの読み込み、配置、印刷設定、素材選択、スライス等プリントに関する各種設定を行う事が可能です。さらに印刷終了後の手順についても記載されています。この手順については後程別の章で詳しく解説を行います。
デザイン


UltiMaker S5の外観は従来の製品と同様に洗練された箱型のデザインとなっており。筐体の両側にはロゴが記載されています。
しかし、UltiMakerチームはS5で、これまでほとんどの3Dプリンタメーカーが嫌煙してきた機能を導入することを決定しました。市場に出回っている新しい3Dプリンターの大半がZ軸を拡張しているのに対し、UltiMaker S5はX軸で印刷する幅を広げることに重点を置いています。
UltiMaker S5はUltiMaker 3 Extendedと同様に高さ300mmオブジェクトをプリントすることが可能です。さらに、プラットフォームの幅は200mmから330mmに拡大されたことで、従来よりも一度に多くのパーツを造形することや、より大型のモデルを造形することが可能となりました。
UltiMaker製品の圧倒的に素晴らしい点はアップル製品にも似た全体的に洗練された製品デザインです。新発売のUltiMaker S5にもそのデザインが踏襲されています。
例えばマシン内部は非常に明るく、視覚と内蔵カメラそれぞれからプリントプロセスを容易に観察する事が可能です。
さらにUltiMaker S5はユーザーにとって利便性と使いやすさを考慮したデザインとなっています。
例えば、取り外し可能なガラスビルドプレートは、パーツの取り外しや清掃のために非常に利便性が高い構造となっています。フィラメント供給システムは、タッチスクリーンと洗練されたユーザーインターフェースにより素早く素材を供給することが可能です。各素材にはNFCタグが搭載されており、素材の種類や使用量等の情報を瞬時に読み込むことで利便性の向上に寄与しています。フィラメントスプールはプリンタ背面に取り付けられており、通常使用している際には素材が視界に入らないように設計されています。


このデザインによりUltiMaker S5は洗練されたミニマムな印象を与えることでしょう。つまりUltiMaker S5はプロフェッショナルな用途での使用と来訪者の目に触れる場所に堂々と置くことのできるデザイン性を兼ね備えた唯一無二の3Dプリンターです。
UltiMakerは市場での知名度も高く、その洗練されたデザインはUltiMaker S5でも変わりありません。UltiMaker S5はオランダ製3Dプリンターの中で最も大きなサイズですがそのクラシックな美学は揺るぎありません。
プリント開始


3Dプリンターのレビュープロセスである3DBenchyを用いテストを開始しました。3DBenchyはプリンターの品質や性能を判断するために使用される最も一般的で人気のあるベンチマークテストです。UtiMaker S5は2つのノズルがありますが、まず初めのテストでは1つのノズルでテストを行う事としました。
UltiMaker S5は積層ピッチ0.1mmで造形を行う事が可能ですので、今回は3DBenchyの小さなボートを可能な限り細かい積層ピッチでプリントしたいと思います。積層ピッチを0.1mmにすることで一般的なの積層ピッチ0.2mmと比べ造形時間は2倍になりました。その結果3時間かけて完成したBenchyのクオリティは驚くべき程高いものでした。


今回のテストではUltiMaker Tough PLAを用いて印刷を行いました。特に驚くべき点は船体のレイヤーがほとんど見えない程高いの表面品質でした。船体上部の張り出しの造形には苦戦していますが初プリントとしては満足の結果となりました。


しかし、UltiMaker S5の実力を正しく判断するには2つのノズルを使用する必要があります。そこで2つ目のノズルにPVAをセットして造形することにしました。この造形にはサポート材が必要なモデルである3D-Mon社のD&Dミニチュアを用いることにしました。これはウォーゲーム用のモデルで、鞘に納められた剣や戦士の服の流れなど、細部までこだわって作られています。




一般的にこのような複雑なデザインにはSLA方式の3Dプリンターが適していると思われます。しかしUltiMaker S5のマルチマテリアル機構と積層ピッチの細かさを試すには最適なモデルであると思います。出来上がった造形物はPVAで覆われているため水の入った水槽に一晩置いておきました。
翌朝出社すると完璧なD&Dのモデルが水に浮かんでいました。PVAが取れた後の造形物を見て驚愕しました。積層ピッチ0.1mmで造形された戦士はほぼ完ぺきな仕上がりであり、細部の複雑なデザインまで美しく再現されており、その表面品質は驚くべき程高いクオリティでした。PVAは一晩でほとんど水に溶け、残っていた部分も2回ほど拭くことで十分に除去することが可能です。


ここまでは非常に良い結果となりましたがUltimaker S5の最大の特徴である大型造形を行っていませんでした。そこで次に選んだモデルはLeFabShopで公開されている複雑な人間の頭蓋骨です。




これもサポートなしではプリントできないモデルでした。積層ピッチを0.2mmに変更し造形を行いましたが細部まで鮮明に再現することが可能でした。実際にUtiMaker S5を用いて造形を行った中で最も印象的なプリントであったと思います。


メインモデルの周囲や内部にPVAを敷き詰め造形を行う事で、素材を洗い流すと、信じられないほどリアルな人間の頭蓋骨が出来上がりました。顎などの複雑で印刷しにくい部分でも糸引きやはみ出しがなく、とても美しい仕上がりになりました。


Tough PLAとPVAを使用したプリントを終えた後、私たちは多色プリントを試したいと考えました。しかし、UltiMaker S5従来のマルチマテリアルプリントに比べこの作業にはあまり適していない可能性があります。そこでFilamentum社の2色のPLAフィラメントを用意し、Nervous System社の2色のツリーフロッグのプリントを行いました。
このモデルはカエルの体全体にねじれたラインが織り込まれた、非常に複雑なデザインとなっています。UtiMaker S5で問題なく造形を行う事が出来ましたが、実際に出来上がった造形物は糸くずと表面品質に問題があるように見受けられました。


表面品質については少し残念な結果となりましたが、プロ用3DプリンターであるUtiMaker S5は、カラフルなカエルよりもサポートを必要とする複雑なプロトタイプに使用される可能性が高いため、必ずしも問題であるとは限りません。
私たちは今後もUtiMaker S5でのテストを続ける予定であり、異なる素材やモデルを試しながら、より多くの情報を伝えていきたいと考えています。これまでの結果を踏まえるとPLAやPVAの印刷には優れているが多色印刷は弱い可能性が見受けられました。
UltiMaker S5は、2020年春の“ベストデュアルエクストルーダー3Dプリンター”に選ばれました。卓越したデュアルマテリアルプリントが可能で。UltiMake3の2.5倍以上の造形量と数々の快適な機能を兼ね備えており、プロや中小企業にとって理想的な選択肢となっています。




ソフトウェア


UltiMaker を使う大きなメリットは、UltiMaker Curaとの相性の良さです。この利点はUtiMaker S5も例外ではありません。実際UltiMaker S5は、人気の高い3Dプリンティングスライサーと、3Dプリント管理のために設計されたプラットフォームCura connectとの連携が最適化されています。
ネットワーク設定を行う事でUltiMaker S5はワイヤレス接続によるプリントが可能です。3Dモデルと印刷設定を行った印刷ジョブを、ネットワーク経由で送信するだけでなく、ライブストリームで印刷の状況をチェックすることや複数の印刷ジョブのためにキューを用意すること、印刷完了の正確な時間を受信することも可能です。
このようにCuraやCura connectと連携することで印刷の利便性が向上し印刷手順の簡素化につながりました。スライスソフトウェアの最新バージョンは常にUtiMaker S5をサポートしており、設定や3Dプリンターの管理が可能となっています。
当初は幾つかのバグもありましたが、Curaを用いたUltiMaker S5の制御プロセスは非常に順調に進んだことで、UltiMaker のプロフェッショナル3Dプリントエコシステムは新たなセールスポイントであるといえます。
またUltiMaker S5の発表と同時にUltiMaker Appをリリースしており、これを用いる事でユーザはより手軽にスマートフォン等の携帯端末からプリントの進捗状況等の最新の情報を得ることが可能となりました。さらにアプリを通して、プリントジョブの準備の完了やプリンター本体のエラー等の通知がされるため、これにより3Dプリンティングの効率化とユーザーの利便性の向上が期待されます。
技術仕様


- 組み立て方式:組み立て済み
- 寸法:495 x 585 x 780 mm
- ビルドボリューム:330×240×300mm(13×9.5×11.8インチ
- 積層ピッチ:
0.25mmノズル:60~150μm
0.4mmノズル:20~200μm
0.8mmノズル:20~600μm - プリント温度:最大280˚C
- 印刷速度:< 24 mm³ /s
- XYZ解像度:6.9, 6.9, 2.5ミクロン
- プリントヘッド:デュアル・エクストルージョン(水溶性サポート付き
- 交換可能なプリントコア
- アクティブレベリング機能付きヒーテッドビルドプレート
- オープンフィラメントシステム
- 材料:PLA、Tough PLA、ナイロン、ABS、CPE、CPE+、PC、TPU 95A、PP、PVA、Breakaway、サードパーティ製素材
どこで購入できるのか
UltiMaker S5は、現在日本では総代理店のBRULĒ inc.で購入することが可能です。UltiMaker社によると、同社のグローバルパートナーネットワークを通じて販売されているとのことです。
UltiMaker S5の価格は949,800円と高価ではありますが、プロや中小企業向けに設計された非常に多機能で高性能な3Dプリンターです。




本記事は、All3DP.comに掲載された記事を日本語に翻訳したものです。